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大西ワタルのDTM機材メッタ斬り!! Vol.14 -YAMAHA SPX2000 その2-

2010年4月14日20時05分 in レビュー

このところお決まりのパターンになってきたが、その他のリバーブと対決をさせてみたい。


使用したのはいつも通り、bazooka-studio 5.1。
今回は女性バラードの楽曲を使用し、ヴォーカルにかけるプレート系のリバーブで色々試してみた。

声のトラックのセンドを全てのリバーブに同時に送り、各リバーブのリターンを卓で1つずつミュート解除しながら聴き比べた。リバーブの設定は、タイムや低域、高域、プリディレイタイムなどをどのリバーブも同じにしたり聴感上で近づけたりし、各リバーブの質感の違いだけをなるべく聴くようにした。

YAMAHA SPX2000
プリセットまんまの時点では太い。ローがたっぷり。密度間、中低域~中域の存在感がある。


YAMAHA SPX900
ローに独特の存在感がある。位相ズレたような浮遊感がある。またハイが若干耳につく。そこが昔っぽいが好き。

digidesign D Verb
リバーブタイムが短く聴こえる。ハイが強く粒子が荒い。ブライト。深みというよりは高域に残響を付加する感じ。安っぽく聴こえるが、ブライトな質感で派手にしたいR&B;系などには逆に合うかも。

digidesign ReVibe
なめらかで明るい。中高域の質感が良い。透明感もある。しかしオケ中だとうるさく感じる場面も。少しだけギターロック寄り。下北系?

digidesign Reverb One
サラサラとしたシルキーな感触が欲しい時のリバーブ。高域の存在感がある。女性バラードには良いかも。

WAVES Ruinessence Reverb
暖かみがあり、浮遊間がある。うるさくはならない。ダーク系だが質感が良い。ただ中低域の量感を上手くコントロールしないとオケがニゴる。

Lexicon 480L。

1986年発売。90年代までは定番中の定番だった。一昔前は写真にあるコントローラーがスタジオの大きな卓の真ん中に乗っている風景が当たり前だった。この実物の響きを初めて聴いたとき、「あ、これを使わないとプロの音にならないんだ」と思った。 独特の明るく抜ける響きがあるが、そこがミョーにポップで“らしく”なる。また80~90年代の大御所系な音がする。そう感じるのは、この音に矯正されて来たからか?
しかし今ではスタジオの片隅においやられている…。

ProToolsを初めとするDAWという環境下において、「どこでも同じ音」が出ないと作業に支障がある場合が多くなってしまい、持ち運びに不便なアウトボードはMixで使われる事が少なくなってしまった。

以上、色々と試すがどれも良い部分と悪い部分があり、これさえあればあとはいらない的なものを選び出すのは難しい。逆に、Mixの中で楽器によって使い分けるといった事も必要だと思う。

ちなみにSPX2000のルーム系はドラムにも良かった。若干ギラついたのでHighを下げて解決する。



自然界では音の発生源から耳に音が届くまでに距離が長いほど、音が反射する要素が増えるので、反射音の比率が多くなるし、耳元で囁かれれば、ほぼ反射音が無い。エフェクターのリバーブでも、量を増減させて音の距離感をコントロールすることができる。たくさんかければ音がボヤけて遠くなったように聴こえるだろうし、全くかけなければ近く聴こえる。

しかしCDなどで聴く事ができる“リバーブ”はとても現実の生活で耳にするような残響とは程遠く、やたら長く響いていたり広く感じたり暗かったり眩しかったりする場合が多いのはなぜか。それはラジカセもしくはイアフォンという小っぽけなスケールの再生環境では、少し過剰かつデフォルメした効果が必要だからだ。

音の響きで空間を“演出”するというのは、音楽を聴く人の気持ちとかイメージとかを増長させる事に意味がある。人の体を取り巻く環境が変われば人の気分は一瞬で変わるからだ。たとえばデスクワーク(宅録でも良い)をしつづけて煮詰まった時に「外の空気を吸う」というたったそれだけの行為で気持ちがスッキリしたりする。例え汚れた東京の空気さえも新鮮に感じるし、風の音を聴くだけで部屋に籠っていたときの閉塞感から解放されたりする。同じように、リバーブの響き一つでリスナーはウッディなスタジオで目の前でドラムを叩いているような錯覚も覚えるし、カーネギーホールでピアノを聴いている気持ちにさえ無意識のうちになる。それがリバーブの効果だとはわからなくても、満員電車の中でipodを使って異空間にトリップする事が出来る。
僕が中学生のころ、練習用ギターアンプのスプリングリバーブの非現実的な残響は僕を無限の宇宙空間に連れて行ってくれた。ナチュラルトリップから何時間も帰ってこられなくなって母親に怒られるのなんて当たり前。怒られたら夜中にヘッドフォンでリバーブを聴く。目をつぶったり部屋を暗くしたりするともうヤバい。今でも目をつぶってリバーブの音を聴くと、粒子や霧のようなものが見えたり、白や黒や薄青色の空間が視界に現れるような気がする。
この“音が響いて伸びる”現象が起きると、なぜか人間は心地よい気分になったり面白くなったり、また悲しくなったり怖くなったりするらしい。

なぜ今更ハードウェアのリバーブなのか。それはやはり、その機種にしか出せない特有の質感があるからだ。リバーブは、同じようなリバーブタイプを選んで、タイムを同じ長さに設定しても、プラグインの種類や機種によって様々な音色を聴かせてくれる。どれが良い、悪いではなく、単純にリバーブプラグインや機種を変えるだけで、楽曲の中でグッと楽器の存在感が増したり空気感が変わったりする事が良くあるのだ。DAW環境でも、プラグインに縛られずにアウトボードを使う事によって、プラグインとは異なる質感になるし、得られる物も多い。そういう理由で選択肢の一つに、ハードウェアのリバーブを加えるのはとても意味があると思う。

この機種は、プラグインのリバーブに飽きちゃった人、買ってよしです。

Written by

名前:
大西ワタル
サイト:
http://bazookastudio.com/
最終更新時間:
2013年05月27日20時38分