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大西ワタルのDTM機材メッタ斬り!! Vol.18 -SPL Mix DreamXP-

2010年7月16日00時04分 in レビュー

こんにちは。
今回はレコーディングした素材を、音量バランスなどをとり1つの作品として完成させる作業である"Mix"の為に生れたマシン、SPL社のMix DreamXP (みっくすどりーむえっくすぴー) という機材をブッた斬ってみる。




 これはミックスバッファーというジャンルに属する機材で、ミキサーの特殊形と思ってもらえればよい。ミキサーというからには音をミックスする機材だ。しかし各チャンネルの音量を調整するツマミも無い、音色をかえるイコライザーも付いていない。ただ16チャンネル(8ステレオ)ぶんの音を混ぜ、ステレオにして出力するだけである。これをどのような場面で使うのかと言うと、レコーディングの最終仕上げ、Mixで使用するのだ。

本題に入る前にMixとは簡単に言うとどんな事なのか?という事から簡単に説明していきたい。


 DTMソフトを使ってバラバラに録音した楽器の音や歌声、打ち込んだシンセの音などは、パソコンの中でやはりばらばらの音声ファイルとして存在している。それを一般の人がこのaudioleafのページなどで聴けるようにする為には、一つのステレオ音声ファイルにまとめなくてはならない。その作業をMix (みっくす) という。大昔には5センチくらいの幅のオープンリールのマルチに各楽器の音を録音し、巨大アナログミキサーで時には大人数で手動でフェーダーを動かして音量を調整し、それを別途もう一台用意した幅が6mmくらいのオープンリールテープに録るといった工程を踏んだ時代もあったらしいが、DTMソフトだろうがアナログ巨大卓だろうが、多数のばらばらの音を1つ(厳密には左右で2トラック)にする事を"Mix Down(みっくす だうん)"略してMixと言う。

 Mixという作業は、まず各楽器の音量を整える事を基本とする。それぞれの楽器の音量を、その楽曲が求めるバランスで聴こえるようにするのである。この時点ですでにグルーヴやストーリーが生まれていればそれは最高の録音テイクと呼べるだろう。そこから発展して、イコライザを使って音質を整えたり、リバーブをかけてシーンを演出したりするワケだ。tr
 この時にバラバラに録った音 (= トラック) の数が少なければ処理もシンプルで済む。録り音さえシッカリしていれば特別な処理を施さなくてもサウンドは良い状態で再生される。しかし楽曲が複雑になりトラックの数が増えてくるにしたがって、音をまとめるのに手間がかかるようになる。1トラックだけで聴いる時には気にならなかった余分な周波数成分も、トラックが数十にも及ぶにつれてお互いを邪魔しあうようになる。50個(50トラック)の音が1つの曲に同時に存在するためには、それぞれがお互いの役目をわきまえ、譲り合いの精神を持たなくてはならない(これはMixで周波数帯域がどうのという前に、作曲の、音符の並べ方の段階から本当は意識されなければならない事でもあるのだが)。また左右バランスや前後の奥行き感の微量なさじ加減が、サウンドを良い具合に共鳴させるのか、それとも喧嘩させてしまうかの分かれ目になってくる。

 具体的な用法としては、インターフェースから各トラックの音声信号を出来るだけパラアウト(別々に出力)し、それをこのミックスバッファーに入れ、ミックスバッファーのステレオアウトはまたインターフェースにインプットしてやりMixされた音声を録音するというものだ。このMixDreamXPはステレオ8インで、2アウトという仕様になっている。パンなどはMixDreamXPには装備されていないので、DAW上のトラックを8つのステレオグループに分けて出力し、MixDreamXPに入力する。MixDreamXPのステレオアウトは前述したようにオーディオインターフェースに入力してマスターとして録音してしまう。この時にマスタートラックがさらにMixDreamXPに入力されてしまうと信号がループし発振してしまうので気をつけよう。
 もうお気づきかも知れないが、このMixDreamXPを使う為には18(うちアナログで16)は装備したオーディオインターフェースがあるとその能力が最大限に発揮されることになるだろう。実際にはドラム、ベース、ギター、シンセ、ボーカル、のようにカテゴリーごとにステレオで出力させる事になると思う。

 ProToolsが世に出、しばらくするとPCのCPUパワーがどんどん上がり一般家庭にもシーケンスソフトから発達してレコーディング機能を備えるようになったDAWが浸透し始めた。自宅でもPCのモニターを見ながらMixを出来るようになった頃から言われ始めたのが「デジタルMixにおける飽和感」という問題だ。これはDAW内部の演算によってMixをする時に、トラックが増えるにつれて音の分離が良くないような聴こえ方をしたり、圧迫感というか、それこそ音が飽和してしまったように聴こえてしまうというものだ。これはDAW内部の演算で音を混ぜる事が原因になっているとも言われている。また多数のトラックをまとめてステレオにする場合、マスターで音量がオーバーするのを避けるためにそれぞれのフェーダーはデジタル演算によって少しずつ下げる事になる。そうなると各トラックの音は元音よりも低いビットで出力されることとなる事にも原因があるのかも知れない。
 これらの問題はデジタル録音であってもアナログ卓でのMixする場合は起こりにくい。高級なアナログ卓になるとSNも良いし内部回線のヘッドルームも高く設定されている。たとえ歪んだとしても心地よい倍音になってくれる事がほとんどである(高級な卓は歪んだ音さえ最上級である)。また、デジタルレコーダーの出力は常に一定で16bitのレコーダーなら16bitで出力する。なのである程度エンジニアの感性のままにMixしても問題が起こりにくかったのではないかと思う。DAW上では、フェーダーを上下するという事は同時にビットレードを上下するという意味になるので音色の変化を招く。フェーダーだけではあまり影響が無くてもプラグインなどをたくさん使うと、音量を下げたものをまた上げたりという事の繰り返しになり、デジタルと言えど音が劣化する。

 そんなDAWならではのMixの欠点を出来る限り防ごうというのがこのMixバッファーなる機械だ。オーディオインターフェースから出た音声をアナログの領域で混ぜ、ステレオにまとめる事によってどのような効果があるのか。次回は実際に使いながら、この辺の事を見ていきたいと思う。

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名前:
大西ワタル
サイト:
http://bazookastudio.com/
最終更新時間:
2013年05月27日20時38分