audioleaf WEB MAGAZINE

No.14・できるかにゃ・番外編2

2010年8月25日19時43分 in コラム

さて、ここで最近オレがやったお仕事でちょっと珍しいパターンのものをご紹介。ブツはカポ。.....ん?、カポ知らない?、そっか。実は実際今回紹介するバンドも知らなかった。もしかしたら最近はあまり見かけなくなったのかも知れないけど、かつてのフォーク・ロックには欠かせない存在だったこの一品をまずはご紹介。


カポ、正式名称はカポタスト。コレ何なのかというと、ギターのネッにク取り付けることによって、任意のフレットを0フレットにしてしまうもの。.....ちょっと解りづらいかな?。
例えばC~Am~G~C、というコード進行の曲があったとする。これをアコースティック・ギターなんかで奏でたら解放弦の鳴り方も加わってとてもキレイ。ところが、突然歌い手が「ちょっと低いな。キーを半音上げてくれない?」なんて言い出した日にゃコード進行はC#~B♭m~G#~C#、という恐ろしく弾きづらく、しかも鳴りづらいものになってしまう。う~む、こりゃいかん。でも歌い手がそれが良いって言ってる以上演るしかない.....。
そこで登場するのがカポ。コレを1フレットに取り付けることによって、解放弦はE_A_D_G_B_Eからそれぞれ1音上がってF_B♭_E♭_G#_C_F、となる。そのままCのポジションを1つ(半音)上で押さえればななな~んと!、ギター全体が半音トランスポーズされるワケだ!。つまり、ギターの構成音の理想の形/運指を崩さないまま、出音は半音上がるのである。こりゃなんと便利な。
こういう武器を使って、バレー・コードばっかりで歌に集中出来ないとか、難しくて音がちゃんと出ない、という問題を解決。'70年代にフォークの弾き語りを演る人達なんかはとても助かったワケ。そればかりではなく、カポを付けることによって本来のギターのレンジと変わるので、アレンジにも最適だったんだ。


こちらはThe Eaglesのギタリスト、ドン・フェルダー。歴史に残る名曲"ホテル・カリフォルニア"のイントロはこのWネックの12弦ギター部の7フレットにカポが装着され、BmキーのアルペジオをEmポジションでプレイ、あの独特の響きが完成した。ちなみに高校生時代のオレの初完コピ曲(懐)。

さて、じゃあそのカポとやらを使ってみようじゃないか。どれどれと楽器店へ.....う~む、色々種類があるな。値段もピンからキリまで。
ちなみにオレが学生の頃はカポはなかなか高嶺の花で、ほんの1曲か2曲のために買うのはなかなかムズカシかった。そして、例によってその構造を真似て、自分で作り始めたのであった。


でっきるっかにゃ
でっきるっかにゃ
かっせかせフッフゥ~ン♪


あら"タッポさん"と"noン太君"、今日は何作るのかな?、ん、カポタスト?、今回もまたマニアックだね~。んで、準備するものは?、フムフム、鉛筆と、輪ゴムと、ええ!?、ギター・スタンドォ~~!?。





まず、ギター・スタンドからガード用のゴム・チューブを外す、ふんふん。


そのチューブの中に鉛筆を入れて?


輪ゴムでネックに取り付けたら.....出来上がり~!?

.....そう、たったこれだけ。でもその実用性たるや完璧なモノ。実際、コレで多くの作品を作って来た。
先日もオレがプロデュースとアレンジ、ギター演奏を手伝っているヴィジュアル系バンド"シンディケイト"の新作レコーディングで使用。.....内輪の恥のハナシだけどさ、スタジオの某スタッフに「ギター・スタンド貸して」と用途を説明した歳、ソイツは「そんなのムリに決まってるんだから、素直に楽器屋さんに行って買った方が良いですよ」と言った。.....オレはもったいないからソイツに完成品を見せてやらなかったよ(爆)。

ここでもうひとつアイデア紹介。
今回何故カポを使用したのかと言うと、この"ボクサー"という曲は往年のアリスの名曲"チャンピオン"を彷彿とさせる"老いた王者"がテーマ。で、アリスはアコースティック・ギター2本とドラム、という特殊な編成だった。で、'70年代当時はこのギター・デュオみたいな編成がとても多く、複数のギターをカポタスト使用によって構成音を増やすアレンジが良く用いられていた。それを思い出したオレはF#mのキーの曲で、カポを2フレットに装着してEmキーで弾くパートと、4フレットに着けてDmキーで弾くパートを思いついた、というワケ。


シンディケイト、"ボクサー"の1コーラス


左チャンネルが4カポ/Dm、右チャンネルが2カポ/Em。ベースとエレクトリック・ギターはノーマル・チューニングそのままなので、通常のユニゾンでは得られない構成音の幅が感じられる


カポタストによって2種類のパートに別れたアコースティック・ギターのトラック。右手のグルーヴも少々区別して演奏し、ギタリストが複数存在するかのように聴かせる


一番上が"ボクサー"のAメロのオリジナルのコード進行、2段目が2カポ/Em、3段目が4カポ/Dmのコード進行。下段に行くに連れ、徐々に高音部が増えて行く。ちなみに実際のアレンジでは途中にマンドリンも登場し、更に幅が加わる仕組み


.....コレって実は意外に思いつかないんだけど、アレンジの幅、と言う意味ではとても重要。よく、レコーディング中に「アコギも入れてみよう」と思いついていざ録ってみると上手くミックスに混ざらなかったりする。それは多くが、左右に陣取っているバッキングのエレクトリック・ギターと全く同じポジションを同じ演奏者が全く同じポジション/構成音で弾くことで起きてしまう"グチャグチャ感"だったりする。ちょっとどちらかにカポタストを着けて区別(もちろんエレクトリック側にカポ、だってアリだ)してみると、意外とアレンジの幅も広がるんだぜ!。
で、この"即席カポタスト"大活躍のシンディケイトのニュー・シングル"ボクサー"(UNDERCODE PRODUCTION)は8月25日発売!。



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kasetatsuya@bazooka
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最終更新時間:
2011年10月04日21時52分