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大西ワタルのDTM機材メッタ斬り!! Vol.22 - audio-technicha "AT-4080" -

2010年9月28日13時15分 in レビュー

こんにちは。
今月も前回に引き続きマイクを一本試してみた。audio-technicha AT-4080 (おーでぃおてくにか えーてぃーよんぜろはちぜろ)。



これは一言で言うと最新式のリボンマイクである。前回のおさらいでいうと…リボンマイクは構造的にとても弱く取り扱いに注意が必要だ。しかしこの機種は高耐入力性能 = 大きい音に耐える設計となっており、ヴィンテージのリボンマイクより多少は丈夫にできているようだ。この高耐入力性能においてaudio-technicaの製品は優れており、コンデンサーマイクなどでも他社よりも大きい入力に耐えることを謳っている。このAT-4080も、同社コンデンサーマイクと同等の音圧に耐えるスペック(150dB SPL)となっているのは驚いた(…とはいえマイクは人間で言うところの鼓膜に当たる物なので、どんな丈夫なマイクでも大切に扱いましょう)。

従来リボンマイクというものはとてもゲインが低いものである。もっと簡単に言うと音量が小さい。マイクプリアンプなどにも高品質なものを選ぶなどの気を使わないとSNが悪く(ノイズが多く)なるのだが、この機種はファンタム電源を利用してゲインをアップする仕様になっており、SNを稼げる
実は昔のリボンマイクにファンタムなど入れようものなら一瞬にして壊れてしまう。僕らエンジニアの基本中の基本なので、正直なところマイクプリの+48V ボタンをONするのはヒジョー勇気が必要だった。この機能で持ち上がるゲインはとても大きく、コンデンサーマイク並みの音量を得ることが出来た。
メーカーはファンタム使用を奨励しているが、実はファンタムをオフにしてもゲインが下がるだけで音声は拾っているので、音量が大きい楽器の音を録る場合は裏技的にそれでもかまわないと思う。音質的に変化は感じられなかった。しかし宅録環境では存在するノイズの量がそもそもスタジオ環境より多い場合もあるので、この場合は音質に変化があるかも知れないので、迷ったらファンタムONのメーカー奨励の使い方で良いのではないだろうか。

今回のテストでは様々な楽器に立てて実際のレコーディングで使ってみた。
まずドラムのオフマイクに立ててみる。
…あまり部屋の広さが感じられる音ではなかった。部屋の響きよりも楽器本体の直接音がシッカリしている。ルーム感という雰囲気には欠けていたな。少々セッティングを変更し、2mの距離からキックを狙いコンプを強めにかけてみたらこれは成功だった。ダイナミックマイクよりも倍音が多くコンデンサーマイクよりタイトで、中域のザラつきが気持ち良いロックサウンドが録れた。

次、ベースアンプ。距離はネットから1cmのオンマイクでコーンの中心から少しハズして狙う。これは良かった。ダイナミックマイクでは存在感が足りずコンデンサーマイクではレンジが広すぎて低域が締まらないという場合があるが、このリボンマイクは中低域のフォーカスが合っていて輪郭のあるベースラインを捕える事が出来た。低域も十分にあるしアタックもある。アンプの音量が大きかったためファンタムoffにて使用。

ギターはマーシャルとフェンダーの両方に使用で、これもオンマイク。ギラギラ耳に痛い事もなく線が細いこともない。僕はいつもMD421とSM57を2本立ててMixするが、両方の良い部分を兼ね備えた上にリボンマイク特有の味のある質感・倍音感がエレキギターという楽器にとてもマッチしていてとても良い。これもアンプの音が割と大きめだったためファンタムをオフにするとバッチリになった。もちろん音質に変化は無い。具体的に言うと、クリーントーンを録ってみた時にどうしてもアタックが耳に痛い感じになる事があるが、これが上手い具合に中和され、しかもコモるような事が無く中域の美味しい部分を拾えると言えば良いだろうか。JC-120にも試してみたいと思った。

リボンマイクの構造上の特徴として必ず双指向性になっている。これはどういう事かと言うと、マイクの裏側・表側の双方で音を拾うという事だ。ダイナミックマイクはほとんどの機種が前からしか音を拾えない単一指向、コンデンサーマイクでは単一指向・双指向・無指向が選べるようになっている。収録したい音場によってこれらを使い分けるのだが、今回のマイクに関しては双指向性ではありながらも単一指向性くらいの気持ちでタイトさだと思って使った方が良いな。
超リアルというのとはまた違い、"マイク感"というのも変な表現だが何とも言えないリボンマイク特有の倍音感、質感を備えつつ現代的なサウンドになっている。変なクセは皆無でとても使いやすい。
中域に味が欲しい場合に向いている。ジャンルは、ロック全般、生楽器を大事にしたポップ、暖かみが欲しいジャズ、ブルース、小規模クラシックの室内楽にも面白いかも知れない。ただし、ズーンと超重低音からキンキラした高域、スーパーハイファイ感、ドンシャリ感が欲しい人には向いていない。

ダイナミックマイクやコンデンサーマイクのギラついた感じに飽きた人、買って損はしないよ。

Written by

名前:
大西ワタル
サイト:
http://bazookastudio.com/
最終更新時間:
2013年05月27日20時38分