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大西ワタルのDTM機材メッタ斬り!! Vol.26 - Plug-in限定! Compressor色々 - その4

2010年12月29日19時54分 in レビュー

こんにちは。

プラグインコンプ限定聴き比べも4回目。
今月はアウトボードの超名作コンプレッサーをシミュレートしたプラグインを試してみる。

たぶん、筆者を含む全てのレコーディングエンジニアが何も考えずに使える操作性をもつ伝説のコンプUREI 1176。まずはその実機について簡単に説明したい。



UREI社というアメリカのメーカーが作ったこのコンプには、いわゆるスレッショルドというツマミはなく、2コ並ぶ大きなツマミの左側”インプット”を上げてゆくとコンプが強くかかり、下げてゆくとコンプが弱くかかる。同時に音量も上下するので、その分を大きなツマミ右側の”アウトプット”で調整する。アタックとリリースのツマミは一般的なコンプとは逆で、左に回すほどアタック/リリースタイムが遅くなり右に回すと早くなる。左にカチリという音がするまで回しきるとコンプがオフになる。レシオは、4つのボタンで4:1、8:1、12:1、20:1から選ぶが、4つのボタンを同時に押し激しいコンプレッションを得るという裏技(荒技)も存在する。またいくつかのタイプがあり、シルバー、ブラック、ブルーラインなどのモデルが存在する。

現在はまたUNIVERSAL AUDIO社として存続している。

よく使うのはまず歌、ベース、ギターなど、いわゆるコンプをカケ録りしたい楽器類には何でも使える。好き嫌いはあるかも知れないが、どんな生楽器に使っても大きな間違いは起こらないだろう。歌に使用した場合にはまさに右に出る物は無いとさえ思う。またいわゆるドラムのルームマイクに“4つ押し”で使用して激しい音を作る時もある。

そんな名作コンプをシミュレートしたプラグインを見てみよう。


BOMBFACTORY BF76



“ブラック”のシミュレーション。
shiftキーを押しながらレシオボタンのどれか一つを押すといわゆる”全部押し(4つ押し)”モードとなる。これはオリジナルのUREI 1176での裏技で、とても激しいコンプがかかるが、歪み感や荒々しさのようなものはあまり付加されない。
このコンプは万能で何にでも使える。
ドラム、ベース、ギター、歌などそれこそ何にでも使う。
ドラムにはレシオ”全部押し”で思いっきりかけたり、1:8でうっすらかけたりする。
アタックとリリースの設定でグルーヴをコントロールする事、グルーヴを付加する事が出来るので非常に重宝する。

ギターはクリーンのアルペジオなどにもGood。かかりかたはコンパクトエフェクターのコンプレッサーを自然にした感じに近く、ピッキングとサステインを上手く強調してくれる。
音色は僅かに中域が持ち上がりファットになるが、オリジナルのアウトボードにあるような倍音感は少ない。とても使いやすく万能なコンプと言えるが、1つの楽曲であまり多くの楽器に使いすぎても楽器ごとのキャラクターが似通ってしまう。また飽きてくると聴き疲れするような感じがあるので使いすぎるのは控えている。


BOMBFACTORY purpleaudio MC77



PURPLE AUDIOというメーカーが作ったUREI 1176をいわゆるリメイクしたアウトボードの、シミュレーション。操作性や使用感はBF76と全く同じ。
音質は若干、タイトな方向で上品だ。BF76のようなコンプ感が欲しいが、ファット感は少し控えたい時、またすでにBF76を使いすぎていてキャラを変えたい時などに使う様にしている。リリースの戻り具合もスムーズになっている気がする。
音をファットにしたければBF76、スッキリさせたければMC77といった使い分けだろうか。


WAVES CF76





WAVESがシミュレートした1176。パネル下部にあるスイッチでブラックとブルーラインのキャラクターを変えられる。



これもやはり上記2機種とは違うキャラクターで、音は可もなく不可もなくアナログの倍音も付加してあって良い音をしている。アタックをオフにすることも出来、その場合にインプットを上げていくと明らかに倍音(サチュレーション)が増えてゆく。このキャラクターが悪く無く、サチュレーション単体としてでも使う価値があると思う。ドラムなどにコンプを強くかけるとポンピングが強く起こってリズムがよく分からなくなってしまうが、サチュレーションを使えばコンプ感とは無縁でピーク成分を押さえる事が可能。
しかし第一印象は見た目がカッコ悪いと思った。パネルの質感などはとても凝っていてリアルだがInput/Outputのツマミがダサい…。



今回はそれぞれのプラグインとbazooka studio所有の1176シルバー実物を女性ヴォーカルのトラックにインサートし聴き比べながら簡単に印象を探ってみた。

CF76BLUEY
1kあたり上がり15k下がる?明るく元気なキャラクター。

CF76BLACEIY
950Hzあたりの中域が下がったような印象リリースに粘りある感じ?

BF76
1.5k付近が前に出る。超高域が出ない耳に疲れるような印象。

MC77
500Hz付近が下がるハイファイ系?BF76と同じツマミ位置ではコンプのかかり方が強くリミッター的要素が増える。

1176SILVER(実機)
250Hz付近が上がり、粘りが強い。艶や色気が増強される。


といった風に、どれも微妙ではあるが明らかに違いは感じる。実はどれを使っても間違いではないのだが、その中でダントツで光り輝いていたのはやはり実機である。
ボタンが8個、ツマミが4つ装備されモノラルの信号しか処理できないコンプレッサーのくせにMacのデスクトップが買えちゃうくらいの値段がするのだが、やはりそれだけの素晴らしさはあるなと。しかしだからこそ各社がマネしてプラグイン化するのだろう。1176のシミュレートものは今回紹介できなかったメーカーからも色々出ている。それぞれに特徴があるのでそれらを聴き比べするのも面白い。


コンプレッサーは、ダイナミクスレンジ(=音の大小)をコントロールする装置である。使い込んでゆくと、音の大小がコントロールされる事によってどんどんサウンドが変化してゆくのが分かる。演奏をタイトにしたり、リズムの勢いを増した感じを出したり、今まで聴こえなかった余韻が持ち上げたり、聴こえ過ぎていたアタック成分を潰していったりすると、最終的には音は別物になってゆく。そういった効果を上手に使いこなし、CD(またはiPod)などの“小さな”媒体に、文字通りエナジーをコンプレス(圧縮)して詰め込むことで、かろうじて小さなイヤホンからアーティストのエナジーを感じられるようになる。

みなさんもぜひコンプを恐れずに使いこなして欲しい。


そして次回は、とあるGTR AMPをメッタ斬りするのでお楽しみに。。


最後に。。
2010年、最後のレビューとなりましたが、今年1年お付き合いいただき有り難う。来年は更に毒舌に色んな機材をメッタ斬りしていくのでヨロシクです。

Written by

名前:
大西ワタル
サイト:
http://bazookastudio.com/
最終更新時間:
2013年05月27日20時38分