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大西ワタルのDTM機材メッタ斬り!! Vol.32 -LINE6 POD X3 PRO- その2

2011年4月19日16時53分 in レビュー

こんにちは。
前回に引き続き今回もLINE6のPOD X3 PRO(ぽっど えっくすすりー ぷろ)をチェック。



前回の予告通り、bazooka所有のMarshall JCM800と対決させてみたいと思う。



楽曲は3人編成のギターポップで、割と歪んではいるが爽やかにヌケていくといったタイプのギターサウンドである。
実機のキャビネットには、SENNHEISER MD421 SHURE SM57の2本のマイクを立てて録音。

POD X3 PROのマイクシミュレーションも併せて聴き比べてみる事にする。

POD X3 PROもJCM800のシミュレーションを選び、実物に近づけようと格闘してみるが、なかなか似てこない。単体で聴いたら悪く無い音のハズなのだが…
具体的には高域のキラッとした部分がなかなか出てくれない。中域のスカっと抜ける厚みも無い。低域が前に迫ってくるような立体感も無い。悪く言えばラインの音が不自然にギザギザになった感じである…。JCM800のシミュレーションを立ち上げた時に、余計な色づけなどいらないと思って“ROOM”を0%にしておいたのを思い出し、ツマミを上げていってみたら割と似て来た。なるほど。


直感で音を作れるようにとの配慮からか、ツマミが非常になめらかなロータリーエンコーダ(要するにデジタルのボリューム)なのだが、逆に微調整が効きづらい。EDIT画面を見ると数値が%表示になっている。ツマミを動かしても、なかなか1%単位で動かすのは難しい。どうせならクリックあり(カチカチっと段階的にコントロールできる)ツマミにしてくれ。また、%は100までしか無いので、ようするに一つのツマミが100段階"しか"無いワケだ。1%動かすだけで思った以上に大きく音が変わってくれる。MIDI企画のの127段階より少ない。この辺は意外にダメだなー。

また左はしに2個装着された赤いパネルは一見、オプションのスロットが他にも用意されていて換装が出来るのか?サイズ的にはAPIのマイクプリアンプなどと同じくらいに見えるし…などと少し楽しみに思っていたが、残念ながらデザインのみの見かけ倒しだった。試しに四隅の六角ネジを外してみたが赤いパネルはビクとも抜けなかった。横から見たらただの飾り板だった…




実用的な面での利点はインプット、アウトプットがアナログ、デジタル、USBと豊富に用意されている事だろう。



アウトプットがデジタルの96kHzまで対応なのはヒジョーに良い。これならばたいがいのレコーディングに対応出来る。宅録でも可能ならデジタルアウトから録音するのが良いが、お手持ちのインターフェースにデジタルアウトに余裕があれば"match DIG In"に合わせ、インターフェースのデジタルアウトからデジタルケーブルを本機に接続してしまえば、インターフェースのデジタルクロックに同期してくれるので簡単で良いと思う。
デジタルのクロックというのはほとんどのケースにおいて、受ける側が出す方にクロックを合わせる。良いクロックジェネレータやインターフェースのクロックアウトがあってもPOD X3 PROはクロックを受ける専用の端子が無い。そこでこの"match DIG In"にする事によってPODX3PROをリファレンスとなるインターフェースのクロックにロックさせる事ができるのである。

USBで接続すれば、付属のソフトウェアでコンピュータ上の画面で操作する事も出来る。

ハードウェア・アンプシミュレータの行方
プラグイン・アンプシミュレータというものが存在する上でハードウェア版のシミュレータを使う利点として、直感でコントロールできる操作性は言うまでもなく重要だ。デザインも重要だが、ボタン類を省略しすぎるのはどうかと思う。DTM上で、ショートカットやコマンドでの操作に慣れていても、アウトボードの“一発ボタン”はやはり気持ちがよい。ハードウェアのアンプシミュレータも、あまりに音作り画面の階層が深かったり、音作りの最中に間違えてアンプを切り替えたら今までの設定が無くなるとか、そうなると便利さをどこに求めたら良いのかビミョーになってくる。

サウンド面ではインプット部分に真空管などの回路を使い味付けに使えるようにするとか、プラグインと違う事が出来ると楽しいと思う。
また、例えばリハスタでJC-120のパワーアンプ・インプットに接続して使うケースが起こった場合に、アウトプット先を“JC-120 poweramp in”みたいなヴァリエーションがあると便利だと思う。

付属のガイドブックに、シミュレーションされているアンプやエフェクター類の実機が写真付きで全て載っている。これを見ながら本機に触っていると、なるほど~このアンプはこんな音なのかと感心しながら夢中になってしまう。また実機の音を聴いた事が無いアンプのシミュレーションを聴いて、「このアンプってこーゆー音だったのか」と、ギターアンプの音の知識を得る事が出来る。
しかしながら、中には実物のアンプとは違った印象のサウンドをもつシミュレーションもあったわけで、となると、聴いた事の無いアンプに関しては、シミュレーションされたものが正解か分からないという疑いも生まれる事になる。
これだけの数のシミュレーションがなされている事に一抹の寂しさも感じる。実物に抱いていた聴いた事の無い音への夢みたいなものがスケールダウンして再現されてしまっているような気持ちを感じた事も確か。ギターアンプのような個性と情熱の塊を、簡単操作でそのアンプが発するオーラまで全て再現しろというのも酷な話かもしれない。

よって、この機種も「これを買えば他は要らない」といった所には落ちないと言わざるを得ないだろう。この事はどの機材、ギター、ギターアンプにも言える事になってしまうのだが、ギターならストラト(レスポール)!みたいな個性を伴いながらも「オレはこれで一生行くんだ」的な終着駅を見つけるには時間がかかる。むしろ最初から決めつけず時間をかけて吟味し尽くしてたどり着いた所が、自ずと自分の求めるサウンドと呼べるものになっているのであろう。
しかし、とにかくお金をかけず、手軽に、もう嫌になるほどギターアンプの山に埋もれたい、あのアンプもこのアンプも、同時に欲しい!的な用途ならばこのPOD X3PROはとても役に立つだろう。キッズでもバイト代を貯めたらスグに買える。これが全てではないが、追い込みようによっては実物のアンプにかなりの所まで肉薄出来る。下手にテキトーなマイクを立てて生の音を宅録するよりはずっと良い。という事を踏まえたならば、とても素晴らしいギターアンプシミュレーターだと思う。

とにかく宅録で曲を作りまくりたい人、どのアンプを買って良いのか右も左も分からない人、買ってよし。
また、実物の音も知っているが金もかかるしメンドーだからアンプなんて何でもいいや、大事なのはプレイだという大人も買って良し!
自分だけのサウンドを探す旅人、これをカタログ代わりに踏み台にするのもよし。

Written by

名前:
大西ワタル
サイト:
http://bazookastudio.com/
最終更新時間:
2013年05月27日20時38分