audioleaf WEB MAGAZINE

No.19・できるかにゃ・¥100?

2011年6月14日14時31分 in コラム

さて、この"風の唄"、ギター・パートに関してはベーシックとオブリガートがクランチ、ソロが歪み、と言う比較的"おとなしめ"+"常識的"なアンサンブル。以前紹介した通り、アンプはオレのRoland BC-60でマイキングはSM58のみ、カバーを外した状態でオン/オフはパートごとに調整。ギターはオレのトレード・マーク、フェンダー・ムスタング。特にサビでは左右のダブル・トラックが効いてて、ナイフのようにエッヂの効いたキラキラ感が上手く出てる。



で、AメロとBメロが8分ミュート、サビがオープン・ストローク、と言う基本構成なんだけど、ソロと3サビの間にブリッヂ的な部分、良く使う表現で言うと"Cメロ"にあたるパートが8小節ある。で、ここだけはドラム/ベースと共に1小節の白玉のみ。
で、ここで少々問題。
サビに丁度良い音作り/歪み加減にはなったが、BPM125で、このパートで白玉で1小節伸ばすには実はちょっとだけアンプのゲインが足らず、次の小節のアタマまでに音が減衰してしまう、と言う問題が起きたとしよう。
もちろんDAW上なんだからタイム・コンプレッションと言う便利な手がある。でも、せっかくだからミックス的にこの"Cメロ"を演出する、と言う方向で何かアイデアがないものか考えることにした。
まず、歌詞。

大空翔る夢も 大海原渡る夢も
幻想なんかじゃない きっと叶うさ


まず、この曲の歌詞の中でここが最もスケールが大きい。次に、わざわざ白玉アレンジになってる意図は「風を/空気を、動かしたい」。元より"風"がテーマのこの曲で、作者が最も風を吹かせたいのがこの場面なのだ。
次に、Gのキーのおかげで、ここのG→C→Em→Dと言うコード進行が、ギターでロー・コードを弾いた時にとても美しい、と言うこと。バレーもなく、解放弦の多いここのポジション/ヴォイシングはギターには理想的。ならばそれを活かさない手はない。


"風の唄"Cメロ部分、青い波形がバッキング・ギター・パート。確かに次の小節に届くよりも前に減衰が始まってしまい、ボリュームが小さくなっている


"風の唄"Cメロ部分。聴いての通り、若干バッキング・ギターが「短い」と言う印象


で、今回用いるのはリバーヴ。AuxフェーダーからL-Rのギター・トラックに送り、消えかかるポジション・チェンジ直前にマックスになるように上昇オートメイションを描く。それを最後の1小節以外は繰り返す。
ちなみにリバーヴは例によってオレのスタンダード、プリ・ディレイのたっぷりと聴こえる4.5秒の大ホール・セッティング。
.....どうかな?。これで作者的にはこの部分がこの曲の中で最も"空気が動く場面"になった。その直後にオール・ミュートになるミックス・アレンジとも良い具合に対照的で、むしろ減衰してしまう部分がとても美しいアンサンブルになった。


バッキング・ギター・パートにAuxから送られたロング・リバーヴのオートメイションを描いたところ。丁度波形の逆を行くように、減衰が始まったら上がる、と言う反比例の関係になる


各コード終わり/1小節ごとにエンディングで「ポワ~ン」と言うリバーヴが残り、次のコードにかぶさるように消える

で、これはあくまでも左右のバッキング・ギターへの処置。もしもアレンジ的に欲張るのであれば、更なるダビングも当然ありだ。ただし、あんまりギターの本数が増えると次に控えている3サビのインパクトが減ってしまう。なので、邪魔にならないけど効果的なもう1音、と言う難しい状況。





では、今回はここに更にもう1アンサンブル、ギターを加えてみよう。そのパートの名は....."スライド・ギターだ!"。


スライド・バーを用いたボトルネック奏法

ま、若い人達にゃあんまり馴染みがないかもだけど、通称"スライド・ギター"とか"ボトルネック奏法"とか呼ばれるこのスタイルは、ボトルの先っぽのような形状のバーを指に通したり持ったりし、ギターの弦の上を滑らせる演奏方法。主にカントリーやブルース、もしくはハワイアンなんかでお馴染みの奏法。歴史的には実際に瓶の注ぎ口部分を割ってプレイしたのが始まりなので、専用のバーが作られてからも"ボトルネック"と呼ばれるんだな。


一般的に売られているボトルネック/スライド・バー。透明なものもある

.....ん?、持ってない?。オレも持ってないよ!。
と言うワケで例のコンビの登場~!!。


でっきるかっにゃ
でっきるかにゃ
かっせかせフッフ~ン♪


買うと意外に高価、しかも滅多に使わないなら代用品だ、ってことで今回ご紹介するのは.....名付けて"100円ライター・スライド奏法"だ!!。



スライド奏法に於いてはフレット移動の際のカクカク感がなく、理論上はフレット・レスのようなサウンドになる。このことを利用して、コードが代わる場所で音が途切れるデメリットがなくなり、今回のように繋げて聴かせたい時にはとても有効なんだ。
で、目的はネック/フレットの上を滑らせたいので、実は丸みのある100円ライターはサイズ的にもなかなか理想的。今回はG→C→Em→Dのコード進行に合わせて、12→5→9→7フレットの2,3,4弦を1和音として弾く。で、ラストのDからはミュートに向って上昇~。






何しろ相手は100円ライター、こう持たなくちゃいけない、なんて言うルールはないので、弾きやすいように自由に持って大丈夫


スライド・ギター・パートが入った"風の唄"Cメロ部


新たに加わったスライド・ギターと、L-Rにリバーヴ演出の加わった状態のギター・パート。これで尻つぼみ感は完全に払拭!

スライド・ギターの歴史は古く、前述のように元は酒瓶のアタマの部分をブチ割ってプレイしたのが始まり。なので、原理が同じであれば何もホンモノのスライド・バーでなくてはいけない、ってことはない。それ故にオレは100円ライター派。バンドマン時代(20年前)は、スライドのソロがある曲でいつもサインの入った100円ライターでプレイした後、客席に投げる、って言う"お約束"場面があった。実際、これまで多くのスライド・ギターを様々なアーティストの曲でプレイして来たけど、全~部100円ライターによるもの。


コレがその、20年くらい前の100円ライターでスライド・ソロを演って、終った瞬間に客席のファンに向けて投げ入れるのを、そのファンの人が撮った決定的瞬間の秘蔵写真!。オレがカメラ目線、ってことはこの人に向けて投げてんだろうけど、無事に受け取れてるのかは不明(爆)。.....どうでも良いけど、衣装が恥ずかしいね(苦笑)

.....ま、ホンモノがあるに越したことはナイんだけど、そう言うワケで表面が滑らかであればけっこうどんなものでも代用品になり得るので、皆も色んな素材を試してみてくれ(笑)。


とりあえず身近にあった缶、マウス、フィンガー・イーズ、USBメモリなど(笑)。滑りゃイイんです、滑りゃ!





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最終更新時間:
2011年10月04日21時52分