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大西ワタルのDTM機材メッタ斬り!! Vol.39 -Metric Halo Mobile I/O ULN-2 Expanded-

2011年10月04日12時58分 in レビュー

今回はちょっとお高めのインターフェースを試してみた。



Metric Halo (めとりっく はろ)のMobile I/O ULN-2 Expanded(もばいるあいおー ゆーえるえぬつー えくすぱんでっど :以下 ULN-2)。

マイクプリアンプを2ch搭載した1Uよりちょっと小さいボディで、プロの場面でも必要な機能が凝縮されている。

フロントパネルを見てみると

左上から、
S/R : 現在選択されているサンプリングレートの表示

CLOCK : 動作中のクロックソース(MIO Consoleで選択)

STATUS : ULN-2が正常に電源供給を受けているか(Power)コンピュータとオーディオの送受信ができているか(FireWire)、クロックにロックしているか(Locked) のチェック

DIGITAL I/O : 信号を入力するデジタルI/O(AES,S/PDIF)、デジタル入力にロックしているか(Locked)

の表示があって、↑↓の小さいボタンで選択するC~9のスナップショットの表示がある。

その横にINPUTとOUTPUTのメーター

さらにその右側が、2chのアナログインプット部のコントロールになる。

+48V ENABLEは、コンデンサーマイクにファンタム電源を供給する時に押す。
マイクプリアンプは、6dBステップのゲインになっている。それに加え、無段階で入力レベルを微調整できるTRIMツマミがあるが、余分な抵抗は少しでも通過させたくないという人はTRIM ENABLEボタンでオフにする事ができる。さらにTRS/MICのボタンで、リアパネルの入力をXLRにするかTRSフォーンにするかを選択出来る。

その右側にモニターレベルの調整と、ヘッドフォンボリュームが付いている。



リアパネルは左から、モニターアウト、アナログイン、そしてS1・S2とR1・R2がマイクプリアンプとA/Dコンバーターの間に設けられているインサートポイント。これは例えばアウトボードのコンプやEQをインサートする時に使う。その右に+4dBと-10dBのレベルを切り替えられるアナログアウト、変わった形をした電源入力、adatオプティカルのイン/アウト、ワードクロックのイン/アウト、S/PDIFとAESのデジタルイン/アウトとなっている。

今回は、このマイクプリアンプも含めてサウンドのチェックを行ってみた。
使用したスタジオはバズーカスタジオb5.1。アナログ入力2chのインターフェースだが、ドラムを録ってみた。現実的には2chのインターフェースなのでマルチマイクはこの機種単体では不可能だが、キックの超低音からシンバルの超高音まで、レンジの広い素材であるためテストには最適だと思えたからだ。


当然、2ch仕様なのでマイクは2本立て、ミキサーなどはあえて使わず、純粋にマイクとマイクプリの音を聴く。対決させたのは、殆どのプロの現場で使用されているといっても過言ではないインターフェースの"digidesign 192IO(でじでざいん いちきゅうに あいおー)"と、マイクプリアンプ"GML 8304(じーえむえる はちさんぜろよん)"。





ドラムキットはbazooka-studio所有の、Ludwigの60'sのヴィンテージを仕様。
マイクは、キックにaudio-technia ATM25(おーでぃおてくにか えーてぃーえむ にーごー)、ドラムキット全体をNEUMANN U-87で狙う。何通りか試してみて写真のポイントに決めた。

DAWはAVid Pro Tools9。

録音ボタンを押し、ブースに走って叩くという事を何度か繰り返して、両方のインターフェース+マイクプリで録音をする。

サウンドは、GML+192IOの組み合わせでは、土台がしっかりした、少しだけマットな音に聴こえ、ULN-2はワイドレンジで艶のある印象であった。妙に高域が強調されたという類ではなく、ハイエンドの空気の部分が奥行きを伴って延びてゆく印象だ。

次にエレキギターを試してみた。
両者ともハイファイな印象はあるが、ゴリゴリした力強い感じはGMLの方が上で、ULN-2は繊細なイメージだ。


ときどき持ち込まれる宅録素材で、リハスタなどで自前のインターフェースで楽器を録ってきたという音源をミックスする事もあるが、周波数レンジもダイナミックレンジも狭く感じるものも多い。当然、マイクの種類なども含めて色々な要素が絡んでくるのだが、マイクプリアンプやインターフェースのクオリティが怪しいと感じる事もある。このULN-2のクオリティでDAWにインプットしたならば、歌声も含めた全ての"マイクを使う"レコーディングを、プロと同等のレベルで録音する事ができるだろう。

インターフェースにお付属のミキサーソフトは、なんと80ビットの解像度を持つ。



Pro Toolsのミキサーはマニュアルによると48ビットなので、格段の違いである。



ちなみに計算してみると1 2089 2581 9614 6291 7470 6176段階 1じょ2089垓2581京9614兆6291億7470万6176 という、もはやワケのわからない単位の解像度である。(じょ)って…初めて見た…。
1bit=6dBという簡易計算で、480dBのダイナミックレンジ…というのも実感が出来ない程のレベルである…。まあ、とにかく理論上、凄いという事だ。

それほどのミキサーなので、これをサミングミキサー、もしくはPro Toolsのミキサー代わりに使ってミックスする事でかなりの恩恵が受けられると思う。



さらにこのミキサーには独自のプラグインなども搭載されていて、使いこなすとなかなか面白い事が出来そうである。例えば、characterボタンを押すと何種類もの"キャラクター"を選択する事ができる。



この"キャラクター"は選択するだけで特に操作系などは付属しないのだが、通すだけでサウンドに様々なキャラクターづけができる。これはミックスの時だけでなく、録りの時にも使う事ができるのが面白い。ただただ味付け無しに録る事に飽きてしまった時に使ってみたい。

これほどアナログ入力部分のサウンドが良くて、内臓ミキサーの圧倒的な性能を持ったインターフェースは、規模は小さくまとめながらも音の良さを一番に求める人に向いている。マイクをつなげば簡単にクオリティの高い音を録る事が出来るので、可搬型レコーディングにも向いている。宅録でちょっと何かを録音したい時にも、何も考えなくてもとりあえず良い音で録れる。またミックスの時は、やたらトラック数が増えてしまって飽和感を感じ始めたら、内臓ミキサーでミックスしてみるのも良いかも知れない。
アナログアウトの音も非常に良く、味付けが無いプロ仕様の音だった。192IOの出音と比べてもほとんど聴き分けられなかったが、あえて言うなら空間が広いという感じだろうか。
注文をつけるならば、インプットジャックが前面にあったら良かった。カッコは良く無いけど。

自宅では最小限の録りしかしないが簡単に省スペースで高音質で録りたく、内臓ミキサーも含めた基本性能に高いレベルを求める大人の方、買うべし。

Written by

名前:
大西ワタル
サイト:
http://bazookastudio.com/
最終更新時間:
2013年05月27日20時38分