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大西ワタルのDTM機材メッタ斬り!! Vol.40 -TONE FLAKE TSRM900-

2011年11月07日16時12分 in レビュー

今回はクロックジェネレータというものを試してみた。

TONE FLAKE TSRM990-2 (とーんふれーく てぃーえすあーるえむ つー)



クロックジェネレーターという機材である。

デジタルオーディオの世界は、マイクやギターのピックアップなどで交流の電気信号に変換された音声を、定義された時間軸で細分化・標本化し、数値のデータに置き換える。また、そうしてデジタル化されたデータを今度は録音された時と同じ時間単位でアナログの交流電気信号に変換し、それがスピーカーやイヤホンで空気の振動に変換される事で音となる。デジタル領域の時間軸を取り仕切る基準となる"時計"がワードクロックというもので、当然この部分はデジタルオーディオのクオリティに大きく関わってくる。
時計が狂えば、音声信号の波形は揺らいで歪みとなる。

その"時計"は、僕たちが普段使う時計でもお馴染みのクオーツといって水晶の振動を利用したものがよく使われている。しかしそのクオーツよりもより高精度を求める為にはルビジウムという原子を使ったクロックが使われる事になる。

デジタルオーディオ機器にはクロックが必ず装備されているが、よりよいクロックを外部から供給してあげることでより高音質をめざそうとするのが、今回試したTSRM990-2などの、クロックジェネレーターであり、TSRM990-2はルビジウムを使った高精度なクロックジェネレーターである。

44.1kHz、88.2kHz、176.4kHzと48kHz、96kHz、192kHzの2系統の2系統6種類のクロックを出力する機能を持っている。



リアパネルはBNCコネクターが6つ並び、今回試した状態では上記の6種類のクロックが各コネクターにそれぞれ立ちあがっている。この部分はユーザーが任意に設定変更することも出来る。
使用したいクロックの出力から、BNCケーブルで手持ちの機材のクロック・インに接続すればよいだけのシンプル極まりない造りだ。



これを、'クロック・イン'を備えた手持ちのデジタル機材に接続し、機材のクロック設定を、'クロック・イン'で受けた信号を使うようにすれば準備は完了だ。用途としてはレコーディングなら当然、オーディオインターフェースに使う事が多くなるだろう。複数のデジタル機材をデジタル接続で使う場合には、各機器のクロックマスターは還俗として一つでなければならない。クロック・インとクロック・アウトが装備されているデジタル機材であれば、おおもととなる機材にこのクロックジェネレーターをつなぎ、その機材のクロック・アウトから出力されるクロックを、2台目のクロック・インにつなぐ、2台目のクロック・アウトを3台目のクロック・インにつなげば良い。クロック・インが装備されていない機材は通常、その機材が持つデジタルインプットからのクロック信号に同期するようになっているので、その場合はこのルビジウムクロックをつないだ機材のデジタルアウトからその機材のデジタルインにデジタルケーブルで結線してあげれば良い。
その他ではCDプレイヤーなどにクロック・インが装備されている場合はそこにつないでも良いが、そういうCDプレイヤーは高級な事が多い。

試聴したのシステムは、digidesign ProTools HDで、インターフェースは同社の192IO。

比較対象は、digidesign 192IOの内臓クロックと、digidesign SYNCのクロック。

まずはdigidesign 192IOで作業中だったプロツールスセッションをそのまま聴く。
当然、いつもの音である。設定変更をして、digidesign SYNC のクロックに切り替えて聴いてみる。何か違和感を感じる。中域が前に出る方向で変化したような気がする。同じ会社の製品なのに何故音が違うのだろうか。
次に、TONE FLAKE TSRM990-2に切り替えてみた。ドンっと空間が広がった気がした。むしろ解像度が増したせいで、自分のミックス中の各サウンドの澱みがよく見えるようになった。

そのままミックスを続けていると、こころなしか自分のかけるEQの幅が小さくなった気がする。視界が良好になったせいで変化がよく分かるようになったからだろうか。
メインとなる各パートごとに音の印象を書いてみると

ドラム
ハイハットにキレが出て、音量を無理に上げずともリズムがわかる。スネアはスティックが皮をヒットした瞬間の超高域とドスンという胴鳴りがより実体感を増したし、キックは重々しく下っ腹に轟く。

ベース
弦の手触りが感じられるようになり、超低域がさらに重心が下がり芯もある感じ。

ギター
歪みの粒子が鮮明になり、焦点の合わないやかましさが減った。

ヴォーカル
声帯の倍音が湿度を持ってきらびやかになるイメージ。落ち着くところに落ち着いて、人間の声が持つ本来の存在感により近くなった。


全体を通して、特に低域の成分がハッキリと見る事ができるようになっており、ベースのローエンドが澄みきっている。これはこの高品質なクロックジェネレーターの作用だが、低域の輪郭が増したのか、または中域~高域のフォーカスが合い、音像が整理された事によって低域が見通せるようになったのか、もしくはその両方なのかは今のところハッキリとした事は言えないが、このことにより、今までは明瞭度を増すつもりで使っているつもりのEQのブースト/カットの量も少なくなっていた。


このように良質なクロックはモニターの解像度も上がるため、ミックスの精度も上がる。今回はミックスだけでの使用だったが、良質なクロックジェネレーターは録りの段階でももちろん作用するハズなので、レコーディングの最初から最後までをこのルビジウムクロックでやってみたいと感じた。

このTSRM 990-2は確かに効果があるが、宅録初心者、また宅録はデモと割り切る人は必要ないかも知れない。これを買える金額を他に投資した方が良い。
しかし業務用としてより高精度なクロックを探している人は、候補の一つに挙げて良いだろう。必ず良い効果を感じる事が出来る。

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名前:
大西ワタル
サイト:
http://bazookastudio.com/
最終更新時間:
2013年05月27日20時38分