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大西ワタルのDTM機材メッタ斬り!! Vol.42 -Little Labs REDEYE 3D PHANTOM-

2012年1月23日12時35分 in レビュー

 今月はこんな機材を試してみた。

 Little Labs REDEYE 3D PHANTOM (りとるらぶす れっどあい すりーでぃー ふぁんとむ)

いわゆるリアンプボックスとアクティブDI、パッシヴDIの3つの機能が詰め込まれた小さな箱である。



 リアンプとはRe-Ampの略で、直訳すると"もう一度アンプする"といったところだろうか。
まずプレイヤーは自宅でギターやベースをライン直の状態で納得いくまで録り(とは言ってもさすがに素の音では弾きづらいのでモニターにはギターアンプシミュレーターなどをカマせておく)、そのデータをスタジオに持っていき素のラインの音を再度アンプに入力し、最適な音量でアンプを鳴らし録音し直すのである。
こうする事によって宅録が得意なプレイヤーであれば独りで作業する事でプレッシャーとは無縁の環境でプレイに集中することが出来るし、自分で修正も自在である。
また自慢の真空管アンプを自宅で爆音で鳴らすのは困難が伴うが、リアンプボックスを使えばスタジオでフルドライブすることも可能である。
まずは本機がどのような作りになっているのか、各部を見てみよう。


フロントパネル左から



Active Bufferd instrument input

これは本機をDIとして使用する時のインプットであり、ここにギターやベースをつなぐ。"Active Bufferd"となっており、リアパネルのmic level outをつないだ機器(卓、マイクプリアンプ、マイク入力付きインターフェースetc…)から+48Vのファンタム電源を供給してあげる事で機能する。アクティブDIのようなものである。

eath rift
これは本機のアースをリフトするかしないか、日本語で言うと浮かせるか浮かせないかのスイッチ。これもDIには普通に付属する機能で、ノイズが少ない方にセットすればよい。ただし、アース性のノイズは接続する楽器や機材、環境、スタジオによって全く違うため、接続する都度、ON/OFFは確認するべきである。

porarity
位相切り替えスイッチ。アンプから出る音が、ギターのジャックから出力されている信号と比べて逆相になっている場合もある。例えばベースではラインとアンプの音を混ぜて使う事も多いので、位相が合わせられるのはありがたい。ただ位相を正・逆切り替えるだけのこのスイッチを搭載していない機器も多いが、イザという時についていないとエンジニアからは不評である。

di/reamp
本機をDIとして使うかリアンプボックスとして使うかを切り替えるスイッチ。

reamp overdrive
リアンプ出力を上げ、ギターアンプに大きめの信号を入力する機能である。具体的にはこのスイッチを押す事によって+10dB、音量がアップする。あまり歪まないアンプを歪ませたい時など、ナチュラルなブースターのような使い方が出来るだろう。

instrument reamp level
アンプに出力するレベルを微調整するツマミ。

instrument re-amp out
本機に入力したラインレベルの信号を、ここからギターアンプ/ベースアンプにつなぐ。

リアパネル左から



expansion out
本機に入力したラインレベル信号の、パラアウト。何に使うんだろう。ギターアンプと、ハードのギターアンプシミュレーターを同時に鳴らして対決させる時とかはいいかも知れない。

expansion in
ラインレベル(+4dB)の信号を入力するTRSフォーンジャック。

line level in
ラインレベル(+4dB)の信号を入力するXLRジャック。

mic level out
いわゆるDIアウト。DIインプットにつないだ信号がマイクレベルになって出力される。

un-bufferd instrument input
これも本機をDIとして使う時のインプット。"un-bufferd"だからなのか、こちらは+48Vのファンタム電源も必要ない。という事はトランス式なのだろうか?フロントパネルの"Active bufferd"と聴き比べてみると面白いと思う。



 インターフェースからギターアンプにシールドをつなげば音は出るのだが、それは間違いなく良くない結果になるだろう。基準レベルとインピーダンスのマッチングがとれていないからである。ギターのジャックが出力する信号はローレベルかつハイインピーダンスであり、逆にインターフェースの入出力部分はハイレベルでローインピーダンス、さらにギターアンプの入力はローレベル、ハイインピーダンス対応となっている。インターフェースの出力とギターアンプの入力はインピーダンスもレベルもマッチングがとれていないので、ギターをギターアンプにつないだ時とは全く異なる音が出てしまう。具体的に言えば"超過大入力状態"になるので、音が歪んでしまうだろう。ならばDAW側でフェーダーを下げ、インターフェースから出力されるギターの音量を小さくしてあげたらどうだろうか。これは、本物のギターと同じくらいの音量レベルに下げようとするとフェーダーは相当下げないとならなくなり、そのぶん信号のビットレートが犠牲になってしまう。またインターフェースとギターアンプの間のケーブルを低いレベルの状態で信号を伝送するので、ノイズに弱くなってしまう。これでは、ライン録音時に録音されてしまったものと合わせて倍のノイズになりかねない。そんな時にこのリアンプボックスを使えばインピーダンスとレベルはギター本来のものに変換され、ギターアンプの近くまではラインレベルで伝送できるためノイズにも強く、ビットの損失も無い状態でギターアンプに入力する事ができるのだ。インピーダンスとは記号Ωで表される、交流電気信号の"流れにくさ"の値といってもいいだろう。基本は"ロー出しハイ受け"と覚えておけば問題ないが、このインピーダンスのマッチングによってもサウンドはまた変化すると覚えておきたい。リアンプボックスとは即ち、インピーダンスと音量をギターアンプにマッチングさせる機械なのだ。

これを使用すればスタジオでギターアンプを鳴らす時間は、5分の曲なら1トラックにつき5分で済むという、商業スタジオ側としては全く面白くない合理的なスタジオの使い方が出来るのだ。浮いた時間は音作りに割り当てるべきである。リハスタにあるマーシャルを爆音で鳴らしてSM57を1本立てて録るだけでもシミュレーターとは別物の音になるし、レコーディングスタジオに行きしっかりしたモニター環境で、全ての楽器でバランスをとった完成系に近い状態に対してアンプの音作りをすればなお良い結果になるだろう。
また違う使い方としては、インターフェースの出力をコンパクトエフェクターに入力する事が出来る。コンパクトエフェクターの出力はDIなどに入力し、マイクプリアンプでレベルを稼いであげればよい。

サウンドの印象は繊細で高解像度な印象がある。
リアンプという行為をメジャーにした、その名もREAMPという機種(現在は買収され他のメーカーから発売されている)があるが、比べてみたところサウンドは微妙に本機の方が上品で低域があり、REAMPの方は若干だが中域が前に出る印象である。
筆者は実際にヘヴィ系の楽曲のギターサウンドを作る際に使用してみたが、やはりオケの中でギターアンプのツマミから操作できることにより録音後にプラグインのEQなどで補正する量も減り、より鮮度の高い状態でギターサウンドをMixする事ができた。

残念なのは、2つあるDIインプットの両方ともが、パラアウトを装備していなかった事だ。そのため、普通のDIのようにラインで出力しつつパラアウトでアンプを鳴らすといった使い方が出来ない。だがそもそもリアンプ前提でDIインプットを使うのであれば、プレイの時に実物のアンプは鳴らさないわけで、よってパラアウトも必要ないという考えなのかも知れない。


この機種は、宅録ギタリスト/ベーシストでリアンプしたい人は間違いなく買ってよい製品だ。DI部分の性能が良いため、ラインの音のクオリティも高いものが録れる。ただし僕がテストした現時点では日本の代理店が扱っていないため、個人で海外から買わなければならない。当然、試奏も試聴も出来ない。賭けのようなものであるが、円高も手伝って価格も良心的だし買って全く損は無いと思う。ただしこれを買うと、ギターアンプを爆音で鳴らす事が出来るブースも同時に欲しくなってしまうだろう。

Written by

名前:
大西ワタル
サイト:
http://bazookastudio.com/
最終更新時間:
2013年05月27日20時38分