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大西ワタルのDTM機材メッタ斬り!! Vol.46 -WAVES SSL E-Chanel-

2012年6月28日12時58分 in レビュー

今回はWAVES SSL BUNDLE の中の、SSL E-Chanel を試してみた



WAVESは多種多様なプラグインを開発するイスラエル発のメーカー。DAWによるミックスで、このメーカーの製品を全く使わないレコーディング/ミキシング・エンジニアはいるのか?というくらい現在のレコーディングシーンにおいて標準となっているメーカーである。このメーカーは、最新テクノロジーを駆使したものから、名機と言われるヴィンテージアナログ機器を再現したものまで多種多様なプラグインを開発している。
今回はその中でSSL E-Channel (えすえすえる いーちゃんねる) を試してみる。

SSLとは英国 Sorid State Logic ( そりっどすてーとろじっく ) 社という大型ミキシングコンソールで有名なメーカーで、SSLのコンソールはProTools誕生以前の世界標準機であった。現在でもアナログ領域での信号処理に関して高いレベルで製品を作り続けるが、その中でも"E"シリーズとはSSLを一躍有名にしたシリーズで80年代の名機である。
そのEシリーズコンソールの1チャンネルのEQとコンプ、ゲートを再現したプラグインがSSL E-Channelである。


左側 "FILTERS"セクション上から

High-Pass フィルター OUT、16Hz~350Hz /-18dB oct
Low-Pass フィルター OUT、22kHz~3kHz / -12dB oct
"SPLIT"ボタン

[HF] Gain ±15dB
"BELL"  : 押すとベル・カーブ、すなわちピーキングタイプ、押さないとシェルビングタイプの選択。
Frequency (周波数帯域) 1.5kHz~16kHz
[HMF] Gain ±15dB / Frequency 0.6kHz~7kHz / Q 3.5~0.1
[EQ TO] BYPASS / DYN S-C
[LMF] Gain ±15dB / Frequency 0.2kHz~2.5kHz / Q 3.5~0.1
[LF] Gain ±15dB / Frequency 30Hz~450Hz / "BELL"
となる。

右側上から""DYNAMICS"セクションとなり

[COMPRESS] RATIO 1:1~∞:1 / THRESHOLD +10dBu ~ -20dBu / RELEASE 0.1s ~ 4s
"FAST ATTACK"アタックタイムは通常、自動検出であるが、FAST ATTACKボタンを押すと1msとなる。

[EXPAND] THRESHOLD -30dBu ~ +10dBu / Range 0dB ~ 40dB / Release 0.1s ~ 4s / "GATE" (GATEのON/OFF)スイッチ
[DYN TO] BY PASS / CH OUT

その下に

Input Gain -18dBu ~ +18dBu / Input Phase Reverse On/Off
Output Gain Fader -24dB ~ +12dB
Meter Mode Input / Output
Analog On/Off
となる。

デフォルトではDynamics →Filter→EQの順に信号が流れが、"SPRIT"を押すとFilterがDynamicsの前に来る。コンプをかける前にフィルターで整理しておきた場合に良いだろう。また"Ch Out"を押すとDynamicsセクションがルートの最後に来る。フィルターとEQで周波数帯域を整えた上でダイミックレンジをコントロールしたい場合に使う。
"DYN-SC"を押すとEQを通過した信号はDynamicsのサイドチェーンに入力される。"BYPASS"を選択した場合は単純なバイパスではなく、フラットな状態のSSL卓を信号が通過した状態を再現しているという。また"ANALOG"スイッチはアナログ的質感のエミュレーションである。

今回はEQに的を絞って試してみた。

まず本機を使った印象だが、特に何もしなくてもSSLの卓を通ったような雰囲気になってくる。全チャンネルに立ち上げ、卓と同じ感覚で使ってみる。好きなアーティストのアルバムで聴こえた、なにものか分からない"あの音"に近づいた。
しかし実機との印象を比べると、そこはやはりプラグインというDAW内部処理の環境と、最高峰とはいえアナログ回路の差なのか、E-Channelの方には鋭さがあり音像が近くに感じた。


今回はバズーカスタジオ所有のSSL 4056Eと対決してみた。



現在はDAW内部の作業によるトータルリコールが割と重要なのでアナログコンソールでMixする事はほぼ無くなってしまったが、録りの時はこれにまさるものは無いくらい便利で安心感があり、重宝している。

まずリアルタイムアナライザーで両者のEQの特性を見てみる。
ピンクノイズをEQに入力し4バンドを色んなパターンでセットし比較する。オレンジ色の線がWAVES E-Channel 青い線がSSL SL4056E、ツマミ画像は左側がWAVES E-Channel 、右側が実機だ。

[16kHz / Shelving / +15dB]


[3kHz / Q3.0 / +15dB]


[1kHz / Q1.5 / -15dB]


[200Hz / Bell / +15dB]


カーブは両者ほぼ同じといって良い形を描いておりかなり精度の高い再現がされている。WAVESが行ったシミュレーションは完璧と言ってよいだろう。

アナライザーでみると、16kHzのシェルビングはかなり下の帯域からブーストが始まっている。SSLのEQで高域をブーストしていくとサウンドがどんどんブライトにきらびやかになっていくのはこの為だったのだろう。
Friquencyツマミは両者を同じ位置にするとカーブの山がズレる事があったので、アナライザーを見ながら筆者が実機の方を微調整した。シミュレーションの元となったSSL卓とバズーカスタジオの4056Eのキャリブレーションがズレているのだろうか。実際の仕様には何ら問題ない。また、実機の方は超高域がロールオフしているのが見て取れる。実機よりE-Channelの方が鋭く感じた理由の一つだろうか。

また違う測定を行うとE-Channel を通った音は2次倍音と3次倍音が増え、"Analog"スイッチを押すとアナログ機器特有のノイズを、ほぼ聴こえないレベルで付加するようだ。つまり通しただけでサウンドが変化するプラグインと言える。これらの倍音やノイズはEQやCOMPをプラグイン内部で"BYPASS"してもしなくても量が変化したりといった事は無かったが、実機の方は"DYNAMICS"をオンにすると倍音が増えるのはご愛嬌だろうか。この辺に本当のアナログ機器の味わいのようなものが隠されているかも知れない。
言い方を変えれば、E-Channelの方は微妙にデジタル臭いと言えるが、それ以外の部分では実機との差は誤差の範囲内だ。デジタル臭いといっても、DAWに標準装備のEQなどに比べると断然、E-Channelは本物の卓でMixしているのと同じフィーリングのサウンドである。

実際の楽器に使用すると、

ドラム : 音像が無駄に膨らまず、シャキッとする。

ベース : ベースラインを上品にオケ中で立つような加工が出来る。

ギター : シャープさを保ったまま耳障りにならない。

ヴォーカル : 野太さよりはきらびやかさを出したい時に使用したい。

と、野太さよりはきらびやかさや鮮やかさを強調するときに使いたいプラグインである。
しかし倍音感もあり、ツルツルした感じにはならない。

プラグインとは言っても、ツマミスタイルなのは細かいフィーリングにも対応できるし、見た目に惑わされなくて良い。グラフィカルな見た目のEQは、グラフを直接ドラッグして音を変化させられるのは便利だが、多くのEQ処理をした時にグラフがだんだん奇妙な形を描き始めると気の弱い筆者は不安な気持ちになってきさえする。ツマミ式ならば過激にも繊細にも、ひたすら好きな音になるまで視覚に惑わさず集中する事が出来る気がする。

ちなみに本プラグインは、カットよりもブースト方向で使うと面白いと思う。EQはまず要らない帯域を引いていく方向で使うのが望ましい。不要な部分を削り、楽器が持つ核の部分を取り出した上で、しかし録り音に含まれなかったり演出すべきものは足していく必要がある。そんな時に 使用したいのがこのプラグインである。もちろんカットの用途にも使えるが、そちらはグラフィカルなEQに任せてE-Channel では直感に任せてグイグイいじってみたい。

SSL Eコンソールは、音楽ビジネスの黄金時代と呼ばれた80年代にアナログオーディオ機器の最先端として開発された。巨額の資金を投じてレコードを作っていた当時の華やかな雰囲気の片鱗をこのプラグインからは感じることが出来る。

EQのバリエーションを増やしたい人、グラフィカルなEQに飽きちゃった人、コンプもついてて便利だと思った人、買ってよし!

Written by

名前:
大西ワタル
サイト:
http://bazookastudio.com/
最終更新時間:
2013年05月27日20時38分