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大西ワタルのDTM機材メッタ斬り!! Vol.48 - WAVES The Tony Maserati Collection-

2013年2月28日11時53分 in レビュー

今月は、現代のレコーディング業界でその名を知らぬものは既にいないと思われるプラグインメーカー、WAVES社のThe Tony Maserati Collection (ざ とにー ませらてぃ これくしょん)を試そうと思う。



WAVES社がss"シグネイチャー・シリーズ"として、トッププロデューサー、エンジニアのサウンドを再現する事が出来るプラグインとして発売するうちの一つであり、主にR&B;やヒップホップなどの世界でグラミー賞を獲ったアメリカのトップエンジニア、トニー・マセラティ 氏のコラボレーションによって彼のサウンドを再現したプラグインである。筆者が好きなアーティストも多数含まれるため、とても興味深い。

バンドルという事で、以下の7種のカテゴリーにわたるプラグインがセットになっている。

Maserati DRM : ドラム
Maserati B72 : ベース
Maserati GTi : エレキギター
Maserati ACG : アコースティックギター
Maserati VX1 : ヴォーカル
Maserati HMX : 空間系
Maserati GRP : サブグループ、マスター等

今回はテストとして、女性ヴォーカルのスロウなミクスチャー系の曲を題材に全てのトラックにこのプラグインを(ACGとHMXは今回使用せず)インサートし、このプラグインのみでMixを行い、サウンドをチェックしてみた。



Maserati DRM



ドラム用のスペシャルエフェクトである。
まず、とても簡単な見た目。下にドラムのパーツを表すボタンが付いていて、ツマミが5コ。メーターの表示モードを切り替えるスイッチ。

SENSITIVITYはインプットレベルである。ツマミを右に回すと左側のランプの色が緑→黄色→赤と点灯し、音も熱い感じになってくる。

THUMPは、低域の量。初めて見る単語だっので訳を見てみたら"ゴツン、ドンと打つ"というような意味であった。
SNAPは、トニー・マセラティ氏の解説によるとスロウ・アタック / クイック・リリースのコンプレッションだそうだ。上げるとコンプレッションが強くなり、アタックが強調される。またTHUMPと同時に使うと良いようだ。
TREBLEは高域の量。
OUTPUTは出力。

コンパクトエフェクターと同じくらいに簡単な操作である。
下に並んだ"TYPE"と呼ばれる、ドラムパーツを表すボタンによって、THUMP / TREBLEの効く帯域は全然変わる。それぞれのパーツに最適化されているという事だ。ツマミがフラットであっても、このボタンによってサウンドに変化がある。

さらに、プリセットが何種類も用意されていて、どれも個性的なカッコ良い音になるので面白い。



キックは塊のような重いサウンドや、アタッキーなサウンドまで、ビートを補強するような方向の変化がある。スネアは、中域の温かみが増しつつ明るく歯切れ良くなる印象だ。



Maserati B72



ベース用はDRM以上にシンプルな見た目である。

DIかSYNTHかを選べるが、SYNTHを選ぶと右下の"FX"が有効になる。
FX が、エフェクトの深さ
TONEはトーン。
FX OUTは 混ざり具合。
INSERT/SENDをSENDにすることでダイレクト音の無い、エフェクトのみの音になる。
内容はフランジャーの様な奇妙なエフェクトがかかる。トニー・マセラティが手がけた過去のアルバムで使用されたサウンドなのだろうか。飛び道具として面白い。単機能なところもコンパクトエフェクター的で楽しい。

テストの楽曲はDIで録ったベースの音だったので"DI"で使用したが、このプラグインを挿した瞬間、何の操作をせずともブッとくてキレもある、ファットなサウンドになった。


Maserati GTi



エレキギター用。
PRESENCEの隣にあるTAMEは、ダイナミクスをコントロールする、要はコンプということだろうか。"THICK RHYTHM"モードでは使用できない。

CLEAN、CLEAN CHORUS、HEAVY、THICK RHITHM、SOFT FLANGEの5つのモードがあり、CLEANとHEAVY以外で下部の空間系エフェクトが利用できる。空間系はどれもメロウでファットな質感が心地よい。

EQ的なツマミがPRESENCEしかないため、音色を積極的に作ると言うよりはシッカリ作った音色をよりブラッシュアップするのに使いたい。



Maserati VX1



ヴォーカル用。
コンプ的なツマミは、"COMPRESS"という表示になる。
CONTOUR 1,2,3のボタンでは、歌っている部屋の広さを切り替えることが出来る。
サウンドは、ブ厚いオケの中でも埋もれない、力強いキャラクター。正にUSA的とも言えるかもしれない。
下部のFXセクションは、一言で言うとディレイとリバーブの複合エフェクトで、ボーカルに最適なチューニングが施されている。SENDモードにする事によって、FXセクションのみを独立させる事ができ、SENDバスにたちあげて空間系としてだけ使用することも可能。

強めに使用すると、女性ボーカルの吐息がきらめく星屑になって宇宙の彼方に飛んでいくような残響であった(笑)。


Maserati GRP



グループバス及びマスター用。
TYPEの選択肢は、DRUMS LIVE、DRUMS PRGM、GUITARS、STRINGS、KEYS、BGV、MASTERとなる。
空間系エフェクトは含まれておらず、各楽器類にマッチしたEQとコンプのカーブがプログラムされている。当然、全てのツマミがフラットな状態でもTYPEの切り替えで周波数のカーブに変化がある。こう来たか!というカーブのものもあって興味深い。



ここまで5タイプのThe Tony Maserati Collectionのみを使用してMixをしてみたが、とても面白い体験が出来たと思っている。特定の周波数帯域を細いQでカットしたり、アタックとリリースを微調整して不要なアタックのみをピンポイントで抑えるといった細かい事は出来ない。もちろん今回のように全トラックにこのプラグインだけを使用してもトニー・マセラティ氏のサウンドにはならない。元音が違うのだから、当然そうなるわけがない。しかしある程度完成された音に対して使用すると、スパイスとして働いて楽曲が持つ感情を増幅する事が出来る。トニー・マセラティ氏が世界のトップエンジニアである理由はこの、サウンドをプロデュースする力にあるのではないだろうか。

本業エンジニア志向の人は買っても買わなくても、まあどっちでもいい。自らのサウンド構築手法を探求するのもまたエンジニアだと思うからだ。
プロデューサー志向の人は、プリセット音色のバリエーションを増やすような感覚で、手元にあったら面白い道具になるのではないだろうか。簡単操作だから、インスピレーションを削がれる事なく音に表情をつけていくことが出来る強力な武器になるだろう!!
特にR&B;やヒップホップに向くのは言うまでも無く、ロック系でもアメリカンテイストなガッツのあるテイストの楽曲を好む人に向いてます。

Written by

名前:
大西ワタル
サイト:
http://bazookastudio.com/
最終更新時間:
2013年05月27日20時38分