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大西ワタルのDTM機材メッタ斬り!! Vol.49 - WAVES The Eddie Kramer Collection-

2013年4月03日15時30分 in レビュー

今月は、前回に続いてWAVES社がシグネイチャーシリーズとして発売するうちの一つ、"The Eddie Kramer Collection ざ えでぃ くれいまー これくしょん"を試す。

エディ・クレイマー氏はビートルズ、レッド・ツェッペリン、ジミ・ヘンドリックスなど、歴史的なロック系アーティストを手がける正に生ける伝説的なエンジニア/プロデューサーである。歴史に残る名盤のサウンドを作り上げた氏の監修によるプラグインがどういうものなのか、見ていこうと思う。

バンドルの内容は、以下の5種類の詰め合わせとなっている。


Eddie Kramer Drum Channel
Eddie Kramer Bass Channel
Eddie Kramer Guitar Channel
Eddie Kramer Vocal Channel
Eddie Kramer Effects Channel

テストとして、クランチ系のギターサウンドが主体の割と激し目のロックな曲を、このプラグインのみでMIxしてみた。


Eddie Kramer Drum



ドラム用のエフェクトである。ツマミが7個と、ドラムのパーツを選択するボタンが6個、メーター表示を切り替えるトグルスイッチがついている、

ツマミ類を左サイド上から見ていこう。"SENSITIVITY"はインプットレベル。入力信号の大小に応じて、右のランプが緑~橙~赤と変化する。その下に各ドラムパーツに最適化されたコンプレッサーの、"COMPRESS"ツマミがある。右に回してかかりを強くしていくと音が引き締まる方向の、アタック・リリース共に少し遅い感触の種類である。その下にドラムの不要な音をカットする"GATE"が備えられているが、これは選択ボタンで"BD(バスドラ)"を選んだ時のみに使用する事ができる。

右サイド上の"FX"は、マニュアルにも説明は無いのだがEddie Kramer Drumの場合はリバーブでは無く、アタック・リリース早めのコンプもしくは、歪み系だと思われる。強くかけると余韻が伸び、明るい倍音が増えて存在感が増す。選択ボタンでBD・SNR・TOMSの、いわゆる皮ものを選んだ時に有効になる。

その下にTREBLE、BASSと続くが、これは例えばデフォルトでDAWに付属してくるような普通のEQの感覚とは全く違う、Eddie Kramer氏がドラムサウンドに求める"TREBLE""BASS"である。TREBLEはパーツが明るく聴こえるような、中高域が持ち上がり輪郭がハッキリする種類のコントロールであり、BASSは、重心が低くなるような感触の、低域のブーストである。ちなみにこの2つのツマミは連続可変ではなく、0~5までの6段階の可変であるところも潔くていい!

実際にドラムの各パーツに使用してみると、デフォルトではコンプ感が強めに感じたためCOMPLESSツマミは一旦下げてから調整した方が良いと思うが、アタックが強調され余韻がザラッと伸びるヴィンテージ感が非常にカッコ良い。他にEQなど使用しなくても充分成り立つサウンドになってしまう。


Eddie Kramer Bass



ベース用のエフェクト。タイプを選ぶボタンとつまみが5個。
2種類のタイプを選ぶことのできるボタンは、かなりキャラクターが変化し、"1"ではナチュラルだが"2"にすると中域の前に出たサウンドになる。インプットゲインもアップするようで、それにより、コンプレッサーのかかりも強くなり、総じて元気のあるサウンドになる。
"BASS"では低域というよりは低めの中低域が、"TREBLE"は中高域が持ち上がる。ちなみにカットの方向は存在しない。オケの中で、それぞれ極端にブーストしてみたが、小さいスピーカーでもベースラインが前に出るような音作りになっている。さすがである。


Eddie Kramer Guitar



ギターの為のエフェクトである。ジミ・ヘンドリックスやジミー・ペイジの音を手がけた氏のサウンドが体験できる。
RHYTHM1、RHYTHM2、LEADの3種類からギターのタイプを選ぶ。例によってそれぞれ周波数特性にキャラクターが加わり、また"TREBLE"、"MID"によって変化する帯域のカーブや変化量も変わる。
FXは、空間系エフェクトの量。VERB MIXはリバーブの量、DLYはディレイタイム、DLY MIXはディレイの量。LEADを選択した時には"FLANGE MIX"が有効になり、"DEPTH"でフランジャーの深さを調整する。どちらかというと上品なフランジャーで、うすくかけてオケの中で1歩前に出すという使い方が
出来ると思う。


Eddie Kramer Vocals



ボーカル用のエフェクト。選択ボタン"VOCALS 1"はクラシックロック向き"VOCALS 2"は柔らかいボーカル用という事らしい。"1"の方が中域寄り、"2"は高域寄りである。面白いのは、TREBLEツマミが"1"では0をセンターにして-50~+50の変化になっており、"2"の方ではセンターが50で、0~100となっていることだ。"1"ではTREBLEをカットする事が可能だが、"2"ではブーストしか出来ない。
EQカーブも、アナログ的というか、広めの帯域がなだらかに変化するもので、例えばTREBLEをブーストすると相対的に低域が下がったり、内部では色々な事をやっているようだ。

"FX"はディレイとリバーブの量をコントロールする。リバーブはプレート系だろう。たくさんかけてもモワっとしないが、少量でキラっとぬけてくる、非常に使いやすそうなリバーブだ。


Eddie Kramer Effects



ディレイとリバーブの複合エフェクト。
まず"Z SLAP"と"H SLAP"からタイプを選ぶ。一聴すると"Z"は長く、"H"は短い。
解説によると"Z"は7 .5inch/sec のテープディレイと長いタイムのEMTプレートを、"H" の方は15inch/secのテープディレイとミディアム設定の EMTプレートをそれぞれシミュレートしたという。
この"SLAP"は、"DLY"とは別の独立したエフェクトであり、ディレイ音とは別に短い反射音として存在する。

ディレイ音はマイルドだが割と普通のディレイであり、リバーブは歴史的名盤で聴くことが出来る味わい深い、ラグジュアリィで美しいものである。


今回のエディ・クレイマー氏監修のプラグインは、とてもシンプルな作りであるのに処理は的を得ていて、いかに少ない処理で音を魅力的にするか、という試行錯誤の歴史が詰め込まれているようであった。出音が良くてマイキングが良ければ、EQなどは広めの幅でザックリと演出する方が位相もおかしくならないし魅力を損なわないのではないか。今回のプラグイン群に、EQ的なツマミは最大でも2つしか存在しない。エディ・クレイマー氏による"BASS"と"TREBLE"は、どんな設定にしても魅力的に聴こえてしまう魔法のようなカーブを持っている。

総じて、ヴィンテージ感のあるロックサウンドが好きな人に是非おすすめです。
マスターにテープシミュレーターもかませたくなるね!

Written by

名前:
大西ワタル
サイト:
http://bazookastudio.com/
最終更新時間:
2013年05月27日20時38分