audioleaf WEB MAGAZINE

大西ワタルのDTM機材メッタ斬り!! Vol.50 - Pelonis Sound model42-

2013年5月27日20時26分 in レビュー

今月はPelonis Sound の model42 (ぺろにす さうんど もでるよんにー) というモニタースピーカーを試してみた。



耳慣れないこのメーカーはカリフォルニアでスタジオ設計、音響測定などのサービスを行なっている会社だという。いわば音響空間設計のプロが作ったモニタースピーカーは、どんな音を奏でてくれるのだろうか。

パッシヴスピーカー
パワーアンプ/クロスオーバーが1Uサイズのユニットに収められたもの
スピーカーケーブル



これらがセットになっている。



まずこの、ねじ曲がったような菱型のボディが目をひく。例えばデスクに置いて斜め上を向くように置いたり、スピーカースタンドに置く時に内振りにしたりと様々な置き方に対応しており、最適なリスニングポイントを得られるようになっている。スタジオのスピーカースタンドに置いて眺めていると視野がゆがんだみたいで軽いめまいと吐き気を覚える…写真ではなかなか伝えられないのがもどかしいが…

パワーアンプユニットとスピーカーは、1つのスピーカーに対して4本のケーブルで結線する。



パワーアンプは100wが4つ内蔵とのこと。このサイズのスピーカーには充分な出力である。スピーカーケーブルのコネクターは割とシッカリしたものが備えられているので、ケーブル好きな人は色々なスピーカーケーブルを試してみるの余地があると思う。パワーアンプユニットのフロントパネル右側にはUSBジャックがついており、コンピューターとつなぐことで5バンドのパラメトリックEQとディレイ、レベルのプログラムを行うことができ、その設定は1Uのユニットの中に記憶できるという。



今回は歌のレコーディングとMIxで使ってみた。

スタジオはbazooka-studio b3。
左右計8本の細くてからまりそうな付属のケーブルでスピーカーとパワーアンプをやっと結線し、まずリファレンスにしている楽曲を再生することにする。この初めて聞くメーカーの、初めて見るねじ曲がったデザインのスピーカーはどんな音を奏でるのだろうか。やはりキワもの系なのだろうか。それとも真面目で地味なのだろうか。ナチュラルという謳い文句でコモった音だったらどうしようか。などと、初めてのスピーカーやヘッドフォンを聴く時はいつでも一応ドキドキする。一応エンジニアなので。しかし今回は良い方に裏切られ、気分が上がった!

いつも使っているFOSTEX NF-1と比べると、音量は小さいがキラっとハイファイ感のあるキャラクターを持っている。定位もとても見えやすい。タンノイ製だというこの同軸スピーカーユニットの威力だろう。スピーカーユニットのサイズは4インチと小さいので重低音などは当然出ない。最近の小型スピーカーで、このサイズでどうやってこの重低音出してるの!?みたいな製品があるが、そういった製品にある違和感のような物はmodel42には無く、ストレートに高域まで澄み切ったサウンドを出してくれる。ストレートにと書くと、中域が充実した種類の製品もあるが、model42は高域が綺麗で輪郭がハッキリ見える。低域は量は少ないが質感は密度があって、シマッている。重みも感じられる。

色々な角度でセッティングをしてみた末、ウーファーの穴を上にしスピーカーをほぼ真正面に向けたセッティングがこの部屋では一番よく鳴ってくれるようなのでそうする。



このスピーカーで歌録りをしていると、普段よりも息遣いやアタック成分がリアルに聴こえる。かといって耳に痛い成分は無く、まったくストレス無く録り進める事ができた。この日にレコーディングをしたアーティストは、シンセが多く使われた打ち込み系のオケの女性ボーカルものである。
自宅でタンノイのスピーカーを使用する某プロデューサーは、NF-1より自宅との違和感が少ないという旨のコメントをくれた。

またミックスをしているときは、EQのわずかな調整も反映されるような繊細さがある。低域も量は少ないが像はハッキリ見えるため、EQをさわると音もちゃんとついてくる。

音像がタイトでキリッと引き締まっているイメージなので、細かい音のアタック感や質感などを微調整し作りこんでいくのに使いやすそうな印象。どちらかというと顕微鏡的でクール、コンパクトなサウンドイメージである。ブーミーな感じが無く、小音量でもハッキリと音を描き分けるため、自宅でも使いやすそうだ。ジャンルは問わず、繊細な音の差し引きを目で見るようなミックスに向いていると思う。自宅ではヘッドフォンでないとやりづらそうな微妙な調整やエディットも、このスピーカーならやれると思う。

また昨今のボカロものなどのコンピューターミュージックや動画サイトで再生される事を目的とした音楽を作っている人は高域重視のPC付属スピーカーで再生される事も想定しなければならないが、model42が持つ高域の解像度の高さはこれらの環境に対応して使いやすいと思う。

逆にワイドでおおらかな音場や、パンチ力のような物、爆音にした時にスピーカーから吹いてくる風、腹に響く重低音のようなものはあまり感じられない。リスニング用途として暖かい音を求めている人には不向きかもしれない。またモニタースピーカーから出る音で楽器を演奏する用途にも、このスピーカーが持つクールでコンパクトなキャラクターはなかなかノリきれないかも知れないし音量感も足りないかもしれない。

というワケで、プレーヤー指向の人よりエンジニア指向の人向けだろう。自宅で小音量でMixをやりたい人にはとても向いている。タンノイが好きな人にもお勧めだ。ちなみにかなりの大音量を出しても、変な音にならずクリアさを保ったまま再生したので、自宅レベルではまず音量が足りなくなる心配は無用だ。また同じシリーズにラインナップされているサブウーファーを導入すれば、低域方向の満足度も高まることだろう。

Written by

名前:
大西ワタル
サイト:
http://bazookastudio.com/
最終更新時間:
2013年05月27日20時38分